65:別館前の高野槙

7月15日に新装オープンした別館の玄関ポーチ前には、大きな高野槙(コウヤマキ)があります。
この高野槙は、二代目社長の金谷眞一が誕生を記念して当時の四軒町(しけんちょう)の屋敷に植えられたものが移植され、ここで大きく育ったものです。


眞一の名の「眞(真)」の字はこの槙(マキ)からとられたものなのだとか。
さらに、記念樹に高野槙を選んだのには、こんな理由があったそうです。



私はこの九代目善一郎を父とし、ハナを母としして、明治十二年十二月八日、この四軒町の屋敷に生まれた。
父は私の誕生を非常に喜んで、東照宮境内、厩舎の傍にあって、今では三百年も経て居る高野槇の老樹にならって、この長男である私の将来を祝福する為、槇の樹を二本庭内に植えた。この二本の樹は爾年七十五年、その枝は拡がり、その幹は高さを増し、二本とも私と共に延びて来た。一本はホテルの別館の玄関傍に移し植えられ、一本は昔植えたれた四軒町の屋敷の庭に。
そして、父はこの槇にならって私の名を、真一と名付けたのであった。

「ホテルと共に七拾五年」金谷眞一・著