142:テキスト「ホテルの泊まり方」
金谷善一郎がそうであったように、日本では、ホテルは外国人を受け入れるため作られました。その後も外貨獲得を目的に全国に「国際観光ホテル」が作られるなど、ホテルは常に外国人のために用意されていました。
ホテルを日本人が利用するようになったのはいつからでしょうか。
金谷ホテルの記録を見てみると、昭和30年代から徐々に日本語の広告を出すようになります。
また、「今、私どもでは、邦人の方にも是非泊まっていただくよう骨を折っています」という新聞記事もあり、日本人取り込みに思案していたことが分かります。
テキスト「ホテルの泊まり方」は1963(昭和38)年に作られたパンフレットのようなもので、ホテルと旅館の違い、ホテルの予約の仕方、ベルボーイが荷物を運ぶこと、チェックインの仕方など、ホテルの泊まり方を細かく解説しています。
日本人にホテルを利用してもらうため、ホテルの利用法そのものも説明する必要もあったのです。
「19. ホテルは社交場
寝室だけにひきこもらずPablic spaceを活用するようにします。」
「21. 従業員に対する不満
従業員の言動などに不満がある時は、直接咎めずホテル支配人へつげること。」
といった、クスっとしてしまうような項目もあります。
その他にも、披露宴、新婚旅行、忘年会、テーブルマナー等、日本人の利用を促すサービスを次々に提供していきます。
現代の私たちにとってホテルは、とても親しみのある場所になっていますが、外国人をもてなしてきたホテルにとって、日本人の受け入れは、新たな異文化を受け入れるかのような案件でした。
時代の動きに、しなやかに対応してきたホテルの歴史です。
【関連項目】
39:昔の広告
昔の広告
108:150周年記念誌「金谷ホテル150」
150周年記念誌「金谷ホテル150」