138:英国夫人の知恵
「真実のもてなしには、心から発せられる何かがある。それが何であるか説明することは難しいけれど、だれにもすぐ感じられる何かで、しかもそのことが人をほっとした気持ちにさせるのである」
「威を以て従属させるのでなく、徳をもって懐ける」
ビートン夫人著「ビートン夫人の家計読本」より
翻訳:林望「ビートン夫人の教え」https://www.nttpub.co.jp/webnttpub/contents/beeton/index.html
以前「眞一の教科書」を紹介しましたが、金谷ホテル恐るべし、です。また古い書物が出てきました。料理場が管理していたので私が知らなかっただけなのですが、ほかの本を探していてみつけてしまいました。
Mrs. Beeton's book of Household Management
『ビートン夫人の家計読本』 1909(明治42)年版
1859年初版。ヴィクトリア時代のイギリスで出版された、家族の幸せのため家庭婦人にとって必要な知識全般に言及した本で、その中でも料理に関する内容が厚く、当時のイギリスや植民地のレシピが2000以上紹介されています。
料理場に保管されていたのでレシピや盛り付けなどを参考にしていたと思われます。
そしてさらにもう一冊同じ「ビートン夫人の家計読本を見つけました。
ガムテープで補強されたこの本を見ると、実際かなり参考にしていたことがつくづくと分かります。
金谷ホテルのメニュー名はフランス語と英語がミックスになってるのが特徴の一つなのですが、なるほど、イギリスのレシピも積極的に取り入れていたんですね。フランス料理は、天皇の料理番で有名な秋山徳蔵著「仏蘭西料理全書」なども参考にしていました。
金谷ホテルの料理人は、昭和30年代以降は海外に修行に出たりしていますが、金谷フレンチの基礎を築いた先輩諸氏は基本金谷ホテルの厨房でフレンチを取得しお出ししていました。先生はお客様であり、お客様がお連れになるコックであり、社長が海外視察などで食した料理のメニューと味の記憶だったといいます。
日本におけるリゾートホテルのパイオニアとして、どん欲にヒントやアイデアを集めて、海外のお客様に毎日お料理を出し続けてきたんですね。努力を怠らない日々を続けてきたおかげで、今もお客様は金谷ホテルを訪ねてくださいます。
今回も先輩からつないできたホテルのバトンを実感しました。
【関連項目】
121:眞一の教科書
眞一の教科書