13:バスタブのお湯を温めなおす道具

バスタブのお湯を温めなおすための道具

で、取っ手とコンセントが付いています。
当ホテルには洋式の猫足のバスタブも残りますが、お湯を張って「入浴」するスタイルも多かったことが窺えます。
風呂に関連して、金谷眞一の16歳の頃の記憶としてこんなことが書かれています。
金谷ホテルの黎明期の試行錯誤がうかがえるエピソードです。

▶︎「ホテルと共に七拾五年」から抜粋
弟正造の気質は私と違って非常に激しかった。或日客の注文で風呂を沸かした正造が、そのお客様の所へお風呂の用意が出来ましたと知らせに行った。そして客を案内して浴室に来て見ると、誰かが既に入浴しているではないか。
そのお客様はカンカンに怒って帰って仕舞った。私も側でこれを見て居ったが、言訳する程英語が巧くしゃべれない。
弟は憤りで如何しようもない様な顔をして居る。すると浴室を開けて外のお客様の子供が出て来た。
弟はその姿を見るなりこれを捕えて殴りつけてしまった、子供は大声を出して泣いて、その親のところにかけつけて行った。
その親は非常に怒り弟を捕え父(※)の許へ連れてきて「このボーイは怪しからん、今日限り暇を出せ」と迫る始末である。
父は自分の子供のことではあるし、苦い顔をしてこのお客様にお辞儀をするより他はなかった。
こんなことをしながら金谷の事業は、日一日と成長をして来たのである。
(「ホテルと共に七拾五年」金谷眞一著  P22-23)
※父:金谷善一郎のこと

◎この道具は、ホテル敷地内のギャラリー「金谷の時間」に展示中で、開館中はどなたでもご覧いただけます。