128:池の話 2
クレソン栽培ともう一つ、日光金谷ホテルの池を舞台にした面白い話が残っています。
昭和40年代、金谷ホテルには従業員達の部活動がいくつもありました。その一つが「釣りクラブ」。
ある日、釣りクラブの活動として釣り堀で50匹ほどの虹鱒を釣り上げ、なぜかホテルに持ち帰り、この池に入れたそうです。
池自体の整備も釣りクラブで行い、採卵し養殖までしたというから、まるで「釣りクラブ養鱒場」と化していました。すごいことに、釣りクラブメンバーのやる気だけで池を管理していたのです。そしてこの活動はとても楽しかったようです。
なぜか金谷ホテルのコックさんたちは釣り好きが多く(今でも)、休み時間に川で釣りをしては、釣った魚をこの池に入れていたこともあったそうです。
その魚をどうしたかですが、なんとお客様に釣り堀としてご案内していたそうで、釣れた虹鱒をその夜調理してお出しもしたそうです。なんて豊かなお客様とスタッフの交流でしょう。
ある日がけ崩れが原因で池へ水を送っていた水路がふさがれ池が干上がり、「釣りクラブ養鱒場」はなくなってしまいました。
150年も続いたホテルですから、どんなに楽しい記憶もスタッフがいなくなれば消えてしまうものですが、建物なのか、漂う空気なのかうまく説明できないのですが、確実に「ホテル」はスタッフ達のあれやこれやを記憶していると感じます。沢山のスタッフの笑いなんかを抱きしめているに違いありません。
【関連項目】
71:眞一と釣り
眞一と釣り
67:金谷スタイル
金谷スタイル