124:温度計

むかしのホテルはおおらかだったんだな、と感慨深い。

この気持ちに至った経緯はこう。

廊下にある温度計のことがずっと心に引っかかっていた。150の宝物の一つになるに違いない。これが何者なのか調べることにした。

温度計から出ているワイヤーが穴を通って室内に入り、室温を廊下からチェックできるようになっていた。
現在は数か所残っているだけで、使用はされていない。エアコン導入とともに役目を終えたそう。
驚くことに日光金谷ホテルがエアコンを導入したのは平成に入ってから。まことに避暑地日光らしい話だ。

それまでも屋根裏部屋保管された簾戸(すど:すだれをはめ込んだ建具、よしど、みすどとも呼ばれる)を見ていたので、夏のあいだ客室の扉として簾戸を使用していたことは理解していたが、まさか平成までやっていたとはびっくりした。プライバシーや安全上の観点から、平成に入って全室エアコンを導入し、簾戸の使用を終了したそうだ。そして、あのアナログな室温チェック用の温度計も役目を終えた。

今でも日光は、夏の夜窓を開けていれば、涼しく眠ることができる。金谷ホテルも窓を開け簾戸にすれば、大谷川から吹く川風がお部屋を通り抜け快適だったという。ホテル中に川風が通り抜けていた様子を夢想する。おおらかで快適な夜だったろう。

【関連項目】
28:破壊用ハンマー
破壊用ハンマー

13:バスタブのお湯を温めなおす道具
バスタブのお湯を温めなおす道具

8:猫足のバスタブ
猫足のバスタブ

6:スチームハンマー
スチームハンマー

温度計全体
温度計の穴
室内の取り込み口とセンサー